誰しもにいつかやってくる「親が亡くなる」という現実。
しかし、いつまでも感傷に浸っているわけにもいきません。
いざその時が来た際、慌てないために、スケジュールを立てる際の参考にしていただければ幸いです。
相続とは当事者が複数いる共同プロジェクト
相続対策はほぼ全ての家庭に必要です。
遺産総額は500万円で、相続税がかからないとしても、遺された人たちにとっては大金です。金額が小さいほどよく揉める、なんて話もあるくらいです。
理想の相続というのは、むしろ家族の絆が強まる相続だと言えます。
もし家族の中にお金に強い人がいる場合、その人の力を活用しつつどうやって最適な遺産分配を実現すべきなのか考えておくことをおすすめします。
故人の希望がしっかりと尊重されて相続人一人一人が置かれた立場を思いやって、相続人たち全員にとって納得が行く財産分配が行われる、こういった相続を実現するには普段からのコミュニケーションが必須です。
常日頃から来るべき日について話し合っておく必要があります。
相続について真剣に考え始めの時というのは死が間近に迫ってきている時なので、それどころではなかったりします。体調次第では正常な判断ができなくなっている可能性もあります。
相続とは多くの親族を巻き込んだ共同プロジェクトです。関係人が協力して、絆を深める相続を成功させましょう。
相続手続きのために、今からできること
いつか来る日のために、特に重要なことを記載します。
相続に関する流れの確認、事前相談
専門家に相談し、手続きの方法や必要な書類、「トラブルにならないためにどうすべきか」などを相談し、理解を深めましょう。
法定相続人の確認
まずは登場人物が誰になるのかを知らなければ話になりません。あらかじめ法定相続人を確認しておくことで、遺産分割協議や遺言書作成がスムーズに行うことが可能になります。
遺言書の作成
遺言書は可能な限り残しておいたほうが、トラブルを避けられます。
もし遺言書がない場合は、言った言わないの話になったり、相続をきっかけに身内同士で無用なトラブルを引き起こす、などという自体になる可能性もあります。
相続問題を未然に防ぐ方法として、遺言書はあるに越したことはないと言えます。
また、遺言書があると以下のようなメリットがあります。
- 遺産分割協議を経ずに相続手続きが完了できる
- 面倒な相続手続の負担を大幅に軽減し、円滑な遺産の名義変更が可能
相続の流れ
相続が発生してからやるべきことは以下のとおりです。
被相続人が亡くなってから7日以内
- 死亡診断書の取得
病院や自宅で自然死となった場合、医師が作成して発行するものです。
- 死亡届と火葬許可申請書の提出
死亡届は、全国共通の書式が存在します。原本を市区町村役場へ提出します。
死亡届は、他にも利用する可能性のある手続きがあるため、コピーを5枚程度取っておくとあとが楽です。火葬許可証は、火葬場に提出するものです。葬儀業者が代行してくれるケースが一般的です。
被相続人が亡くなってから14日以内
- 世帯主変更届の提出(世帯主が亡くなった場合)
世帯主が亡くなった場合に限り、市区町村役場へ世帯主変更届を提出します。
世帯主変更届が必要なのは「亡くなった人が3人以上の世帯の世帯主」だった場合です。それ以外の場合、世帯主は自動的に変更されます。 - 年金受給停止手続きと年金受給権者死亡届の提出
年金受給者の場合、年金の受給停止手続きを行います。
※厚生年金の受給停止手続きは死亡後10日以内で、国民年金は死亡後14日以内です。これが遅れると年金が振り込まれ、返金手続きが必要になります。年金事務所へは、まずは電話連絡をし、指示に従うのが妥当です。
- 未支給年金請求の手続き・遺族厚生年金請求の手続き
年金は、亡くなった月まで支給されます。
一緒に生活をしていた遺族が受け取ることが一般的です。 - 健康保険証の返却
国民健康保険に加入していた場合、健康保険証を管轄の自治体に返却します。
- 健康保険・国民健康保険の埋葬料・埋葬費の手続き
被保険者が亡くなった場合、埋葬料または葬祭費が支給されます。金額は自治体や組合などによっても異なります。
- 金融機関へ連絡
金融機関に口座名義人の死亡を連絡します。これ以降、口座が凍結されるため、入出金が煩雑になることに注意が必要です。
- 生命保険会社への連絡(生命保険に加入していた場合)
受取人が生命保険会社に連絡をするのがスムーズです。
被相続人が亡くなってから3ヵ月以内
- 遺言書の調査及び検認
遺言書の有無を調査します。
公正証書遺言や自筆証書遺言を除き、亡くなった方の住所地を管轄する家庭裁判所で「開封前に」検認を受けます。 - 相続人の確定
被相続人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍を確認し、相続人を確定します。古い戸籍だと、見方がわからない場合も多いため、不安な場合や本籍地もわからない、といった場合は専門家の力を借りるのもおすすめです。
- 財産調査
預金や不動産などの資産のほか、借金などの負債も財産に含まれます。
- 遺産分割協議(遺言書がない場合)
相続人全員で話し合い、遺産分割方法を決定します。相続財産の確定や評価は、遺産分割協議の前に必ず済ませておくことが必要です。
1人でも相続人が欠けていたり、合意が得られなかったりする場合、遺産分割協議が進みません。 - 相続放棄・限定承認
負債を相続したくない場合など、相続放棄や限定承認の申立てを行うことができます。限定承認とは、簡単に言うと、相続財産がプラスであれば相続し、マイナスであれば相続しないというものです。相続放棄は相続人単独、限定承認は相続人全員で行います。
相続放棄と限定承認の手続きの期限は、相続があったことを知った日から3ヵ月以内です。それまでに手続きをしないと単純承認したことになり、亡くなった方に負債があった場合は返済の義務が発生するので気を付けましょう。
被相続人が亡くなってから10ヵ月以内
- 遺産分割協議書の作成
遺産分割方法が決まったら遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には相続人全員の署名、捺印をします。
相続が始まる前に、準備できることは準備しておきましょう
ご覧いただいたとおり、相続手続きはタイトなスケジュールでやるべきことがたくさんあります。できる限り、相続が開始する前によく関係者間で話し合って、少しずつ準備を進めていきましょう。