親や兄弟などが亡くなってしまうと、残された財産を相続する権利を有する相続人になることがあります。
この場合に注意しなければいけないのが相続税の納税です
財産が基礎控除額を超えると、基礎控除額を超えた分から相続税が発生します。
相続税は税率が非常に高いという声を耳にしますが、相続税の対象となってしまうと、どの程度の税率がかかるのでしょうか?
また、どのような計算方法で相続税を算出するのでしょうか?
この記事では、相続税の税率や計算方法について詳しく解説します。

相続税の税率は累進課税?税率はどう変わる?

相続税の税率は累進課税?税率はどう変わる?

相続人となった場合、相続した財産に対する相続税を納税しなければいけないときがあります。
相続税という名前を聞いたことのある人も多いでしょう。
しかし実際に相続税を納税したことがあるという人は多くはありません。
ここ数年は亡くなった人の8%程度が相続税の対象となっています
まずは、相続税の税率などについて触れてみましょう。

累進課税とはどのような税率?

相続税の税率は一定ではありません。
相続財産の額が多ければ多いほど税率が高くなる累進課税制度を採用しています。
後ほど詳しく解説しますが、相続財産すべてに相続税がかかるわけではなく基礎控除額を差し引いた課税対象財産が相続税の対象となり、最高税率は55%と非常に高い税率です。
相続税の税率は、課税対象財産の額に応じて8段階に分かれていますので、課税対象となる財産額を正確に算出しなければどの段階の税率を使うのかを間違えてしまいます。
また累進課税制度により、相続する財産が多ければ多いほど税率が高くなりますので、相続前にきちんと対策し、いざ相続となっても慌てない体制を整えておきましょう。

相続税の早見表

相続税の税率は、創設当時からずっと同じ税率で推移しているわけではありません。
平成27年を境に税率が変更となり、今までは6段階の改装で税率が定められていましたが、平成27年度以降は、8段階に税率が分類されています。
また、先ほどから税率は最高55%と繰り返し述べていますが平成26年以前の最高税率は45%です。
まずは現在の税率を表にまとめました。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

引用元: 国税庁「相続税の税率」

平成27年以前の相続税は、法定相続分に応ずる取得金額が3億円を超える部分の45%が最高税率となっていました。
平成27年以降は6億円を超える部分にまで税率を設定しています。
また、法定相続分に応ずる取得金額が1,000万円を超えると一定の控除額がある点も注意しておく必要があるでしょう。

相続税の税率が決定する計算方法

相続税の税率が決定する計算方法

相続税の課税対象となるくらいの財産を相続するとなった場合、相続税がどのくらいかかるのか計算しなければいけません。
しかし、計算方法はやや複雑で計算方法をよく理解できていなければ、どのくらいの相続税を準備しておかなければいけないのかすらわかりません。
相続税を算出する場合、いくつかのステップを踏んで行うと効率的でわかりやすく相続税額が算出できます。
ここからは、法定相続分に応ずる取得金額を算出し、どの段階の税率かがわかる計算方法を詳しく解説しましょう。

財産を全て算出する

まず行わなければいけないことは、財産額の算出です。
被相続人が保有している財産総額を洗い出し、財産を全て金額に換算しなければいけません。
財産は、借金などいわゆる負債となるものもマイナスの財産として取り扱われます。
相続税の対象となる財産は以下の通りです。

  • 現金や預貯金
  • 不動産(土地・家屋・山林など)
  • 株券(上場株・非上場の自社株)
  • 債権(国債・公社債)
  • ゴルフなどの会員権
  • 家財などの動産
  • 絵画・骨とう品などの美術品
  • 事業資産(売掛金・卸資産)
  • 借金

これらの財産を全てお金に換算しなければいけません。
財産の性質により計算方法が異なります。
算出が難しいものも多いので、一般的には相続財産が非常に多い場合などは税理士に依頼し、相続に関する計算や手続きを専門家に任せるケースが多いです。

基礎控除額を算出する

先ほど財産額を全てお金に換算することを述べました。
しかし相続税は、相続した財産すべてにかかるわけではありません。
財産総額から基礎控除額を差し引いた財産を課税遺産総額といい、課税遺産総額に対して相続税の税率などが決まります。
基礎控除額の計算方法は
3,000万円+法定相続人の数×600万円=基礎控除額です。
例えば法定相続人が3人の場合、
3,000万円+600万円×3人=4,800万円となります。

基礎控除額の計算方法も見てみると、法定相続人が多ければ多いほど、基礎控除によって財産から多くの金額を控除することが可能です。
一つ例を挙げてみましょう。
財産総額は5,000万円で法定相続人が3人の場合と4人の場合の課税遺産総額を表にまとめました。

財産総額 法定相続人の数 基礎控除額 課税遺産総額
5,000万円 3人 4,800万円 200万円
5,000万円 4人 5,400万円 -400万円(0円)

同じ財産総額でも法定相続人の数によって課税遺産総額が変わります。
上記のケースによると、法定相続人が増えることで課税遺産総額が0となり相続税の課税対象にはなりません。
同じ財産総額でも法定相続人の数によって課税遺産総額が変わります。
上記のケースによると、法定相続人が増えることで課税遺産総額が0となり相続税の課税対象にはなりません。

課税遺産総額を算出する

財産総額から基礎控除額を差し引くことで課税遺産総額を算出することができます。
課税遺産総額は、相続税算出の基となりますのでここまでのステップを間違いなく算出しましょう。

法定相続で分割する

課税遺産総額が算出できると、課税遺産総額を法定相続で分割します。
法定相続とは、亡くなった人の財産を相続できる権利を持つ人のことです。
配偶者、子供、親、兄弟といった人たちが法定相続人となり、それぞれ相続できる順位が決まっています。
配偶者は常に相続人の立場を有しますが、子供や親、兄弟は相続できる順位と相続できる割合がそれぞれ異なりますので、相続順位と相続割合を表にまとめました。

その他の相続人 妻の相続割合 配偶者以外の相続人における相続割合
第1順位 1/2 1/2
第2順位 2/3 1/3
第3順位 兄弟 3/4 1/4

第一順位は配偶者と子供ですが、子供がいなかった場合、第2順位の親が相続する権利を持ち妻が相続できる割合が増えることとなります。
例えば、財産総額が5,000万円で妻と子供2人が法定相続人となった場合の分割される財産は下記の通りです

5,000万円×1/2=2,500万円
子① 5,000万円×1/4=1,250万円
子② 5,000万円×1/4=1,250万円

相続税率を使って相続税額を算出する

ここまでで、法定相続通りに分割した場合の課税遺産総額と法定相続人が相続する課税遺産額がわかりました。
ここで財産に応じた相続税率を用いてそれぞれの相続税を算出します。
ここで終わりではありません。
というのも法定相続通りに財産を分割できれば問題ありませんが、相続は、被相続人の意思が尊重されます。
遺言によって被相続人から分割方法が示されているかもしれません。
また、法定相続人間の話し合いによって法定相続通りには分割していないことも考えられます。
この場合、いったん法定相続通りに相続した場合に算出したそれぞれの相続税額を合算し、実際の相続割合に按分して相続税額を特定しなければいけません。
相続人が妻の場合は配偶者控除、子供が未成年の場合は未成年控除といった相続人に合わせた控除制度もありますので、控除を活用しながら相続税を抑えることが可能です。

相続税の税率を抑える方法とは?

相続税の税率を抑える方法とは?

相続税は、最高税率55%と非常に高い税率になることもあり、決して低い税金ではありません。
納税額が大きな税額となり、納税資金が準備できないといったことも考えられます。
つまり相続前から相続税対策を行い、課税遺産総額を抑えなければいけません。
前述したように、相続税は累進課税方式ですので課税遺産総額を抑えることが、相続税の税率を抑えることに繋がります。
ここからは、相続税の税率を抑える方法について詳しく解説しましょう。

贈与を有効活用する

相続税率が高くなってしまうのは、課税遺産総額が多いからですので生前になるべく財産を減らして相続に備える必要があります。
かといって財産を浪費しましょうといっているわけではなりません。
ここで有効活用できるのが贈与です。
贈与は、毎年110万円の贈与に関しては非課税ですので、110万円の範囲内で贈与することにより課税されることなく財産を減らすことできます。
また、子供や孫に教育資金としての一括贈与も一定額が非課税です。
子供や孫にマイホーム資金として贈与するケースも一定額が非課税となっています。
贈与を使うことで相続に対する有効的な対策になるでしょう。

不動産を購入する

財産とは現金だけではなく、前述したようにさまざまなものが対象となっています。
最終的には全てをお金に換算しなければいけません。
財産の評価方法は、購入価格ではなくそれぞれ計算方法が異なるのは前述しました。
例えば現金を5,000万円所有している場合と、5,000万円で不動産を購入した場合では相続が発生するときに財産総額が変わるのです。
不動産を購入した場合、相続になる場合の計算方法は購入した時の時価ではなく相続税評価額により不動産価格が算出されます。
一般的に、相続税評価額は時価の7割程度の価格といわれていますので5,000万円で購入すると相続税の財産として評価される不動産価格は3,500万円程度になるでしょう。
相続対策として、現金を所有するのではなく、不動産などを購入すると評価額が下がりますので結果的に財産総額を減らす効果をもたらします。

養子を設ける

財産総額から基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を算出しますが、財産総額を減らすほかに基礎控除額を増やすことにより課税遺産総額を減らすことができます。
基礎控除を増やす方法として挙げられるのが法定相続人の数を増やすことです。
例えば、自分の孫を養子縁組することにより、今まで相続権がなかった人を法定相続人にすることができます。
法定相続人を増やすと、当然ながら財産が分散され、それぞれ相続税の税率を抑えることもできますので、効果的な相続税率を抑える方法といえるでしょう。

まとめ

まとめ

相続税の税率についてこの記事ではひととおり解説しました。
相続税の対象となる人はあまり多くはありません。
そのため、周りでも相続税の税率について理解している人も少ないので相談相手がおらず、自分が相続税を支払う立場になってしまうと戸惑うことも多いのではないでしょうか?
将来、資産家の財産を相続する予定がある場合は、前もって相続について対策することがポイントです。
そのためには相続税の計算方法や税率をしっかりと理解しておく必要があります。
ぜひこの記事を参考にしてはいかがでしょうか?