自分には関係ないと思っていても、もしかすると親に多額の財産があり、相続において相続税の納税が必要になるかもしれません。
相続税などはあまり身近に感じている人は多くないため、いざ相続税の申告となるとどうしたらいいのか戸惑ってしまう人も多いのが現状です。
相続税の申告には期限があり、定められた期日に申告しなければ延滞税が科されることもあります。
この記事では相続税の申告はいつまでにどのように行えばいいのか?
また、親などの財産を相続したとしても相続税の申告が不要なのはどのような場合であるのかといった点について詳しく解説します。
相続税の申告とは
相続税とは、親や兄弟などが亡くなった場合、相続の対象となった財産に対して課税されるものです。
相続税の申告は、行わなければいけないことが多岐に渡ります。
前もってスケジュールを整えながら申告の準備を行わなければ、納税に間に合わないことも考えられるでしょう。
相続税の申告は、決められた書類を集め、相続人が住民票を置いている地域の税務署に対して申告を行います。
相続税の概要
相続税とは、先ほど前述したように、親や兄弟など受け継ぐべき相続財産がある場合に課税される税金です。
受け継ぐべき財産が多ければ多い程税率が上がる累進課税を採用しており、最高税率は55%と相続する財産によっては財産の半分以上が相続税として課税されることになります。
非常に高額な税金となることもあるので、特に資産家は相続に関する備えを怠ってはいけません。
基本的に、相続税は現金で納付する必要があります。
非常に高額な不動産などを所有している場合、相続税の支払いのため、その不動産を売却して相続税を納付することにもなりかねません。
財産がすぐに売れるとは限りません。
もしかすると、相続税の納付のために、財産をディスカウントして売却しなければいけないといったことも考えられるでしょう。
資産家などの富裕層は備えを行ってはいけない理由のひとつです。
相続税の申告に必要な手順
相続税の申告は、誰もが慣れていないということもありますが、非常に複雑でわかりにくいので専門家に依頼して相続税の手続きを行う人も多いのではないでしょうか?
専門家に任せると効率は非常によくなります。
しかし、書類集めや、他の相続人との調整など個人が行わなければいけないことも多いので非常に労力を使う手続きです。
専門家に頼んだとしても自分できちんと手順を把握しておかなければいけません。
ここからは相続税の申告に関する必要な手順について解説します。
法定相続人を特定
法定相続人を特定します。
法定相続人とは、民法によると被相続人の財産を相続する権利を持つ人です。
法定相続人とは民法により定められた相続人を指し、配偶者、子供、親、兄弟などが対象となります。
被相続人が遺言を残している場合などは、法定相続人以外の人が被相続人の財産を相続することも可能です。
また、法定相続人は、相続順位により順番が決められています。
配偶者は常に相続人となりますので、配偶者が相続放棄を行わない限り、夫の財産を相続することができます。
そのほかの相続の順位と相続できる財産の割合を表にまとめました。
その他の相続人 | 妻の相続割合 | その他の相続人における相続割合 | |
---|---|---|---|
第1順位 | 子 | 1/2 | 1/2 |
第2順位 | 親 | 2/3 | 1/3 |
第3順位 | 兄弟 | 3/4 | 1/4 |
まずは法定相続人の人数を特定し、財産における相続割合を把握しておきましょう。
財産額を特定する
次に財産額の特定です。
財産は現金だけではなく、不動産や株券など多岐に渡ります。
また、財産はプラスの財産だけではなく借金などマイナスの財産も財産としてみなされます。
プラスの財産よりもマイナスの財産が多ければ借金を相続することになりますので、相続放棄や限定承認といった対応も必要となるでしょう。
一般的な相続財産として下記の財産が挙げられます。
- 預貯金などの現金
- 土地・家屋といった不動産
- 株式
- 国債などの債権
- ゴルフなどの会員権
- 家財などの動産
- 絵画・骨とう品などの美術品
- 事業資産
- 借金
このような財産の額を計算しなければいけません。
評価額や、その他の計算により財産額を特定し、財産総額を特定しなければ具体的な相続税額がわかりませんので財産額の特定も早めに行う手順のひとつです。
控除額を算出する
相続税は、財産全てに課税されるわけではありません。
一定額を控除することができます。
控除額は以下の計算方法で求めます。
3,000万円×法定相続人の数×600万円=控除額
例えば財産総額が5,000万円で法定相続人が配偶者1人、子供が2人の計3人だったと仮定しましょう。
この場合の控除額は
3,000万円+600万円×3人=4,800万円
5,000万円−4,800万円=200万円
つまり200万円が課税対象額となります。
法定相続人が多ければ多い程、基礎控除額が多くなることがわかるでしょう。
よくある相続税対策のひとつとして、自分の孫を養子縁組により子供にして法定相続人をふやすケースがあります。
法定相続人を増やすことにより基礎控除の額を増やすことが可能です。
控除額によって相続税の額が異なりますので、ここも大事なチェックポイントですね。
相続税を算出する
財産総額や、控除額がわかると課税対象となる財産がわかりますので、ここで相続税を算出することができます。
前述しましたが相続税の税率は、課税される財産額によって大きく異なり、8種類に分類されます。
また、相続税においても税率によって一定の控除がありますので、簡単に算出できるものではありません。
ここまでを見ても非常にややこしい手続きが必要と感じている人も多いのではないでしょうか?
相続税の対象となるほど財産がある被相続人の手続きに関しては課税対象財産が多ければ多いほど専門家に依頼し、相続税の申告や納付を行うことがおすすめです。
相続税の申告と納付
相続税が確定すると、相続人の住民票がある場所の税務署に出向き、申告し納税となります。
相続税の納付は被相続人が亡くなったことを知ってから10ヶ月以内に基本的には現金で納付しなければいけません。
しかし手続きは少し複雑ですが、場合によっては物納や延納などの対応も可能です。
相続は、時に争続といわれるほど相続人間でトラブルにもなりやすく、スムーズにいかないことも考えておく必要があります。
相続税の申告に手間取っている場合は、相続税の納付前に税務署でアドバイスを受けるのもいいでしょう。
相続税の申告が不要なのはどんな時?
ここまでは、相続税の内容や相続税を納付するまでの手順について解説しました。
では実際、相続税の課税対象となる人は、全体のどのくらいの割合なのでしょうか?
平成30年 | 令和元年 | |
---|---|---|
被相続人(亡くなった人数) | 1,362,470人 | 1,381,093人 |
相続税の申告が必要な被相続人の数 | 116,341人 | 115,267人 |
割合 | 8.5% | 8.3% |
この表を見ると、全体の8%程度が相続税課税の対象となります。
この表だけを見てみると、あまり相続税の対象となる人が多くないといった印象を受けるのではないでしょうか?
100人に8人程度が課税対象となっています。
ほとんどの人が相続税を払っていないことがわかるでしょう。
ここからは申告不要なケースについて解説します。
控除額が多い時
最も大きな理由として相続税は、財産全てに課税されるわけではなく基礎控除額を差し引いて、上回った財産に対して課税されるという点です。
控除額の計算方法は
3,000万円+法定相続人の数×600万円
です。
例えば、法定相続人が2人だった場合の控除額は
3,000万円+2人×600万円=4,200万円なので、4,200万円以上の財産を保有している人は相続税の対象となりますが、4,200万円以下の場合、相続税の申告は不要となります。
我が国の相続においては、法定相続人がひとりでも3,600万円以下の財産に関しては相続税を支払う必要がありません。
控除額よりも財産が少ない場合は相続税の課税対象ではないので申告不要です。
相続放棄をしたとき
相続にはいくつかの手段があり相続放棄も相続における意思表示のひとつです。
相続放棄すると、文字通り相続するはずの財産を放棄することができます。
例えば、プラスの財産よりもマイナスの財産が多かった場合、相続して借金を抱えたくない人などは相続放棄を行うでしょう。
もともと被相続人との関係性が悪く、残した財産を相続したくない場合も相続放棄することが可能です。
相続放棄により財産を引き継ぐことがなくなりますので、相続税を支払う必要はありません。
つまり申告する必要が無くなります。
相続放棄することも相続税の申告が不要となる要因です。
相続税の申告における注意点とは?
相続税の申告、納付は手順や計算を間違ってしまうと、手続きがストップしてしまい、訂正に大きな手間と時間を浪費してしまうこともあります。
注意点をきちんと理解することで間違いを事前に予防することが可能です。
ここからは、相続税の申告における注意点について詳しく解説します。
財産額の再チェック
財産額が間違っていないかの再チェックを行わないといけません。
洗い出した財産とは別に財産が出てくると、財産総額が変わるため、相続税額も変わります。
また、後から出てきた財産を誰が相続するかといった問題も出てくる可能性があり、相続税の申告に時間がかかってしまう原因となるでしょう。
財産を見落としてしまい、税務署の調査などで発見されてしまうと、追徴課税の対象にもなりかねません。
見落とされやすい財産として
- へそくり
- 宝石
- 子どもや孫などに自分が開設した口座に入っている預貯金
- 売掛金や貸付金
等が挙げられます。
しっかりと調査した上で財産総額を特定しなければいけません。
相続時精算課税制度の利用
相続により財産を相続するほかに財産を引き継ぐ方法として挙げられるのが生前贈与です。
生前贈与では相続時精算課税制度を使って2,500万円までを非課税とすることができます。
しかしこの制度は、贈与した財産が非課税になるわけではなく相続時に合算して相続税の課税対象とする必要があります。
相続が発生したときに、相続時精算課税制度によって贈与した財産額を合算していなければ、これも相続税対象の課税財産となりますので注意しておきましょう。
贈与についての確認
贈与したから、相続税の対象ではないと安易に考えるのも注意が必要です。
というのも、贈与後3年以内に贈与者が亡くなってしまうと、相続税の対象となってしまいます。
暦年贈与を利用し100万円程度を毎年贈与していた場合、亡くなってから3年以内に贈与していると100万円×3年=300万円は相続税の対象です。
ここも見落としがちなポイントとなりますので、財産を調べるときに注意して確認しましょう。
まとめ
相続における申告についてひととおり解説しました。
全体の8%程度が相続税の対象となるため、あまり経験者がいません。
そのため、手続きがわからず非常に困ってしまうことがあります。
この記事でもおすすめしましたが相続税の申告に自信がない人は、専門家に依頼することや税務署に聞き取りながら進めていくのがいいでしょう。
あまりわからないまま進めてしまうと時間がかかってしまい、延滞税を支払う可能性や相続税の支払いに追われてしまい、財産を値下げして売却してしまうことも考えられます。
余計な負担をかけないためにも、申告については早めの対応が必要です。
是非この記事を参考にして相続税の申告をしっかり理解してください。